父がギャンブルと借金を繰り返していたと知ったのは、20年ほど前、私が嫁いでからのことです。家も財産も全て失い、母はショックで体調を崩してしまいました。
以来、私は父を許せませんでした。顔を見るだけで怒りが込み上げ、「親と思ってないから!」と吐き捨てたこともあります。でも、父ももう92歳で、しかも母と2人暮らし。近所に住んでいる分、支えたい…と思うものの、いざ本人を前にすると優しくできず、自己嫌悪の繰り返しでした。
長年流せなかった怒りが…
今年に入り、父が体調を崩して寝たきりになってしまいました。コロナ禍で病院は満床、訪問診療を受けながら、私が介護することになったのです。「何で私が…」とぼうぜんとしつつ、心に確かにあったのは、「悔いを残したくない」との思いでした。
葛藤をありのまま祈願しながら、私は「調和」という神の教えを思い出していました。父は、体が衰弱しても「今」を懸命に生きています。その姿を目の当たりにした時、私も「今」できることは何か…と考えるようになったのです。
長年抱いていた怒りが、不思議と消えていくのが分かりました。「寝たきりでも居心地が良いように、精いっぱい介護したい」と本心から思えた…、それが大きな奇跡だったと思います。弟と交代で泊まり込み、母も父を一生懸命介護する、家族4人の濃密な時間が始まりました。
見えなかった親心が見えると
父の口に、氷をひとかけら入れると「冷たくておいしい」と喜んでくれました。寝たきりで痛む父の腰を、体の向きを変えながら、一生懸命さすりました。そうして父に寄り添う日々は、いろいろなことを思い起こさせてくれました。
私の進学や就職など、節目節目にアドバイスしてくれた父の笑顔。決まった時は、誰よりも喜んでいました。孫が生まれれば、何かと成長を気に掛け、ひ孫の誕生もとても喜び、かわいがってくれたのです。いついかなるときも私たち家族を優しく見守ってくれていた、父の愛。「私、心の底ではお父さんが大好きだったんだ」と悟り、涙があふれました。
今も深まる父への思い
「お父さんありがとう。いっぱい怒ってごめんね。大好きだよ」と、父の耳元でそっと伝えました。その時、意識がなくなる直前でしたが、うなずいてくれたのです。「分かったよ」とうれしそうな声が聞こえた気がしました。
やがて、父は眠るように旅立ちました。悔いなく見送った今、父の友人から口々に「お父さんはみんなのまとめ役だった」とのお言葉を頂き、ただただ驚いています。父はもうこの世にいないのに、尊敬と愛が増していく。不思議な感覚です。心からの感謝を胸に、これからは父に安心してもらえる生き方を…と思っています。
人は皆 有限の時(人生)を 神の手の中与えられ
我が心の悟りとともに 終日迎えて閉じてゆく
神の教え「真理」学び深めて 出会いを生かす心(努力) 欠いてはいけない
自然と「真理」に 皆の心は染まってゆく
「真理」に生きる者は皆 神の手の中守られて
――悔いなき人生(我が人生) 迎えて閉じる―― 安心されよ
人は皆 有限の時(人生)を
神の手の中与えられ
我が心の悟りとともに
終日迎えて閉じてゆく
神の教え「真理」学び深めて
出会いを生かす心(努力)
欠いてはいけない
自然と「真理」に
皆の心は染まってゆく
「真理」に生きる者は皆
神の手の中守られて
――悔いなき人生(我が人生)
迎えて閉じる――
安心されよ
『真実の光・神示 平成20年版』168ページ(中略あり)