No. 429

引きこもりの息子に笑顔が
夫婦の変化が招いた仕合せ
(カナダAT/60代女性/主婦)

逃れられない苦しみを抱えて

15年前、息子が高校生の時、事件は起こりました。数人の男子学生に絡まれていた日本人の女子留学生を助けようとして、鼻の骨が曲がるほどの暴力を受けたのです。この事をきっかけに、息子は長い長い闘病生活に入りました。

2回に及ぶ鼻の手術の後遺症で痛みが治まらず、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、自室に引きこもる日々。暴力を受けた時の恐ろしい記憶がフラッシュバックし、当時と同じ恐怖が襲ってくるのです。時折うめき声や叫び声が漏れてきて、そっとドアを開けると、暗い部屋の片隅にうずくまり、白い顔をして私をにらむ息子が…。生きた心地がせず、御神体の前で「我が子を助けてください!」と神に訴え続けました。その後、うつ病と診断され、心療内科で処方された薬が効いて、落ち着きを取り戻したものの、心は開いてくれず、家族との会話は全くありませんでした。

転機は息子に合わせた夫の会話

そんな我が家に最初の転機が訪れたのは、事件から7年後の夫の神総本部参拝でした。神殿で心の内を神に語り尽くした夫は、「自分が変わらなければ、子供も変わらないと言い、息子との接し方を大きく変えたのです。親子の会話などなかった夫が、我が子の好きな本を完読して、共通の話題を持つように努力。どんなに忙しくとも時間をつくり、子供の話に耳を傾けていくうちに、息子は徐々に、リビングに顔を出すようになっていったのです。

教えの実践で取り戻した絆

次の転機は、私の変化でした。息子の生活は昼夜逆転し、用意した食事には手を付けず、カップ麺ばかり。その上、恐怖心を忘れるために、たばこやお酒に逃げる毎日。私は心配のあまり、「なぜ、自分の体を大切にしないの!」「親が死んだ後、一人で生きていけるようにしてやらなくては…」と、不満や取り越し苦労で気持ちがいっぱいになっていました。

そんな時、神の教えを通して気付いたのです。誰もが人の役に立つ、運命という宝を持っている。その力を生かせば、必ず悔いのない人生を歩めるのに、私は何をしているのか…。不平不満の心で、息子の行動をチェックばかりしていて、充実した人生など送れるはずがありません。自分にも、息子にも運命があることを信じて、母として、愛ある心で子供に触れていったのです。次第におおらかになっていった私は、家族から「随分変わったね」と言われるまでになりました。その頃には、息子とも、以前のように何でも話せる関係になっていました。

ここまでくるのに約10年。息子の病状は、薄紙をはがすように変わってきました。「人が怖い」という気持ちを少しずつ乗り越え、今では、顔の表情も明るくなり、日に一度は散歩に出掛けています。「子供のことは両親で」と神が言われるとおり、親の変化で引き寄せられた仕合せと感謝しています。きょうも笑い声が響いている我が家です。