若い頃から、「私たちは仲の良い夫婦」とは言えませんでした。我の強い私は、夫に素直に思いを語れません。一方、心の中ではずっと「寂しい」と思っていました。
責める心に気付き、教えを実践
ある日、夫の車の運転にヒヤッとすることがありました。これまでになかったミスが何度か続いていたので、どこか具合が悪いのでは…と胸騒ぎがしました。
人間ドックを勧めましたが、病院嫌いの夫です。渋々申し込みはしたものの、検査の朝もため息ばかり…。そんな夫の姿を見て、私は「やっぱり行きたくないんだ。何で?」と、責める心が出てきました。でも、「これではいけない!」今必要なのは、相手を元気にする温かい言葉。心配している気持ちを素直に伝えようと思い直したのです。
これからも元気でいてほしい思いを込めて、「診てもらって、何もなかったら安心だしね」と、それまでの私とは違った優しいひと言が言えました。夫は心を決められたのか、検診センターへ出掛けていきました。
通院中に深まる夫婦の会話
後日の検査結果は、何と膀胱がんでした。しかし、「本来見つからない段階での早期発見」との説明に、「神のお守りだね」と、夫婦ともに冷静に受け止められたのです。
その後、肺がんも見つかりました。これも、「膀胱がんは、肺に飛ぶことがあるので検査しましょう」という主治医の心の動きがなかったら、見つかっていなかったと思います。
それからは、夫と、治療のために通院に明け暮れる毎日でした。往復の車中では、いろいろな話をしました。共通の友人の話や、日常のたわいのないことまで、自分の思いは何でも伝えました。
少しずつ、夫も自分の気持ちを話してくれるようになって、一緒にいることがうれしく思えてきたのです。我慢していた夫婦関係がうそみたいに心が軽やかで、楽しい二人の時間を過ごせました。
なくなった寂しい思い
今では、何かあっても一人で抱え込まず、夫と話をします。いつしか寂しさが消え、「夫婦ってこんなにいいものなんだな」と心から思います。
夫の二つのがんは、半年の通院治療で全快しました。温かい会話のある家庭があれば、病気になったとしても乗り越えていける。夫の病をきっかけに仲良し夫婦になれたことに、感謝でいっぱいです。