No. 344

自ら閉ざした心を自ら開く
その先にあったものは?
(京都府NT/70代女性/無職)

長年、息子家族と同居していますが、会話がなく、寂しい思いをしてきました。遠慮もあって、あまり話せなかったのです。特に嫁には、「ありがとう」がなかなか言えませんでした。

「きょうしかない」と決意して

ある時、仕事で行き詰まった息子に、嫁が言いました。「無理せんでもええ。私も働いて頑張るから…」このひと言に、息子も、私もどれほど救われたか知れません。実は、私の夫は、仕事を苦に自殺しています。息子の年齢は、夫が命を絶った年と同じで、親の歩んだ道が、子供にも影響を与えることを目の当たりにした思いでした。だからこそ、いつも家族で声を掛け、支え合う大切さを痛感したのです。

一歩踏み出そう。家族に思いを伝えられる自分になりたい。神に願い続けました。

勉強会で、「素直に話せばいいんですよ」と言われた時、目が覚めました。嫁の顔が頭に浮かび、「きょうしかない。伝えよう」と、勇気を振り絞って話し掛けたのです。「いつも本当にありがとう。これからもよろしくお願いしますね」と。嫁は、「私の方こそ、よろしくお願いします」と頭を下げてくれました。何だか心がスッキリして、晴れ晴れとしました。

一歩踏み出して激変した毎日

心の殻を破って、一歩踏み出した瞬間から、人生が変わりました。自信がついたのか、日常の何げないことなど、自分から家族に話せる私になれたからです。気付けば、息子も仕事のことなど、いろいろ話してくれるようになり、表情も明るいです。

私が苦手なことも、嫁や孫に「教えてくれる?」と頼れるようになりました。気持ちよく説明してくれるので、「ありがとう」と心を込めて伝えると、笑顔が返ってきてほんわかします。楽しい会話が飛び交い、我が家の雰囲気は、驚くほど明るくなりました。

買い物に行って、「これは息子の好物」「嫁や孫が喜ぶだろうな」などと、あれこれ考える私がいます。こんなふうに「家族を思える」のは当たり前ではない…。本当に仕合せなことです。

目いっぱい満たされた心

毎年、墓掃除は一人でしていましたが、ことしの夏は、「暑いから、お母さんは休んでて」と、嫁と孫が頑張ってくれました。「助かったよ。ありがとう」と嫁にビールを渡したら、満面の笑顔で受け取ってくれました。嫁との距離が、また一歩近くなってうれしいです。

最近、周りの人から「笑顔がすてきね」と言われます。心が目いっぱい満たされている毎日に感謝です。