全ての出会いを人生の味方に
(MYさん/50代女性/国際救命救急協会理事)

「誰かが誰かを救える社会」を目指して

「誰がどこで倒れても、誰かが処置できる社会であってほしい」国際救命救急協会の理事として、日々そんな思いで心肺蘇生法や救急処置法のセミナーを担当しています。

今、私がこの仕事ができるのは、たくさんの人に出会い、導いていただいたからこそです。最初の出会いは小学校の時。担任が体育専門の先生で、その姿に憧れ、体育の教員を目指して大学院まで進みました。院では、担当の教授が心臓専門の医師だったことから、私も自らさまざまな救急法を学び、資格を取得。その後、大学講師になり、私が救命の資格を持っていることを知った講師仲間が、「国際ライセンスも取得するといいよ」と、国際救命救急協会を紹介してくれました。「人の命を扱う」とはどういうことなのか…。当時の理事長からは、そこに携わる責任の重さを厳しくたたき込まれました。

「寿命」は神のみぞ知るものであり、人間が手出しできない世界です。それでも、いざというときに自分の行動で救える「命」がある。高校時代に父を脳卒中で亡くした私は、懸命な心肺蘇生を目の当たりにしながら、何一つできなかった自分の無力さを痛感しました。だからこそ、皆さんには、万が一に備えて行動できるようにしておいてほしい。何より、大切な家族が突然倒れたときに、絶対に悔いを残してほしくない…と切に願っています。

“全員が”楽しくなければ意味がない!

学生との出会いも、私にとっては掛け替えのないもの。非常勤講師として、毎日違う大学に勤められることに感謝しています。この時、私の軸になっているのが、学生時代から学んできた神の教えです。当時の自分の気持ちを思い出しながら、上から目線で接するのではなく、学生の目線を知って、寄り添えるように心掛けています。

そのために意識しているのは、「授業の中で全員と言葉を交わす」ことです。講義、実技、ゼミ…と授業形態はさまざまですが、「一人一人の心をつかんで行えますように」と、必ず祈願して臨みます。大人数の授業は、全員と目を合わせながら話すことを心掛け、時には小房のグループをつくり、一つずつ回ってポイントなどを伝えます。

私と学生が調和することも大切ですが、学生同士が調和するのも大事なことです。私のモットーは、「楽しく理解! 楽しく上達!」。特に実技の場合は、「できる人」「できない人」が明確になり、できない人を責める雰囲気になりがちです。ですから、「ミスした人だけの責任じゃない。ミスをカバーできなかったことにも責任があるよね」などと問い掛けながら、「特定の人が頑張るんじゃなくて、全員で協力できるように考えること。そうでないと楽しくないよ」と伝えます。すると、苦手な学生は一層頑張り、得意な学生もどうすれば補えるか考え、みんなで話し合うようになるのです。

コロナ禍でも深まっていく縁

令和2年度は、コロナ禍のためオンライン授業からスタート。講師の負担はかなり大きくなりましたが、神の教えのおかげで、心は全く揺れませんでした。特に私が大切にしていたのは、「今、できることを惜しみなく」という奉仕の心です。提出された課題には、一つ一つコメントを書いて返却。間違いはただ指摘するのではなく、良いところも必ず見つけ出すようにしました。逆に、私にミスや勘違いがあったときは素直に謝るなど、直接会えなくても自分から歩み寄り、出会いを深める努力も重ねたのです。

おかげで、対面授業が再開した時は、初対面とは思えないような感覚でした。私は、学生に問い掛けるとき、先に名前を呼ぶようにしているのですが、学生はそれがうれしいようで、授業後には「先生!」と駆け寄ってきて、感想やたわいない話もしてくれます。「分かりやすかったです」「コツがつかめました」などと言われると、役立てたうれしさでいっぱいに。質問をしてくれるとわくわくするし、私も教材研究への意欲をもらえます。

出会いは私の人生を彩る宝。一つ一つのご縁に感謝しながら、求められた場所で、できることに精いっぱい心を尽くしてまいります。