「温かい関心」がつくり出す世界
(水野谷博路さん/50代男性/障害福祉施設長)

「相手に温かい関心を持つ」いつも私の心にある神の教えです。

一人一人の人生に寄り添うために

「障害」といっても、ダウン症、自閉症、脳性まひ…さまざまです。私は、そうした障害を持つ方々が日中を過ごす福祉施設で、施設長として働いています。利用者さんの年代は幅広いですが、皆さん知的障害を伴っています。

突然大声を上げたり、トイレに閉じこもったりと、はたから見れば不適応な行動を取る方も多いです。しかし、そこには、「大きな音が嫌」「自分を落ち着かせたい」など、本人なりの理由があります。うれしい、悲しい、つらいといった「心」があるのは皆同じ。何も劣ったところはありません。ただそれを表現するのが苦手なだけ、伝え下手なだけなのです。

私たちの仕事は、利用者さんのそうした思いを感じ取って寄り添うこと、何より本人らしく、充実した生活をしてもらうこと。そのために、一人一人の利用者さんにチームで関わります。ここで欠かせないのが、「温かい関心を持つ」ことと思っています。「この利用者さんは何が好きで、何が苦手なのか」「家ではどう過ごしているのか」それだけでなく、「どんな人生を歩んできたのか」そこまで深く思いを向ける大切さを感じています。

「子供の頃からこれは苦手でしたね。まずは、できることから少しずつ始めてみませんか」など、その方の人生背景を踏まえながら寄り添っていくと、相手もこちらの思いに応えようとしてくれます。「職員を信頼してくれている」と感じられるのは、何にも代え難い喜びです。私たちは、利用者の方から「役に立たせてもらえた」というやりがいを頂き、屈託のない笑顔に元気をもらっています。私たち職員も、利用者さんも、みんな神から世に役立つ「運命」を与えられている…。まさに神の教えのとおりと思わずにはいられません。

コロナ禍でも揺れない心

今はコロナ禍において、「人の心」が揺れ動いていることを感じます。福祉施設でも、行事の中止や利用者の減少など、経験したことのない事態に次々と襲われ、職員の心も揺れました。

利用者はもちろん、働く職員を守るのも私の任。職員が不安いっぱいだと、利用者さんも敏感に感じ取ります。自分はどう職員に関わればよいのか…。それを神の教えからつかませていただけるのは、本当にありがたいです。どんなときも私の軸にあるのは、「人に喜んでもらうのが仕事」という思い。それがしっかり皆に伝わっているようで、一人一人自分の仕事にプライドを持って、前向きに取り組んでいます。

私は、「まずは職員がやる気にならなければ、利用者さんに喜んでいただくことはできない」と思いながら、職員と関わってきました。今は、隙間時間まで、「利用者さんがうれしそうだったね」「もっとこうしていこうよ」と、利用者の方の話が自然と出るほどです。職員が、「施設長に言われたから」ではなく、自分たちで考え、精いっぱい動くこと。それが、「運命を発揮する」ことにつながっていくのだろうと思います。職員が生き生きと仕事に取り組み、充実感を味わっている姿は本当にうれしく、神が私の思いを応援してくださっている…と感じます。

「運命を信じて生かす」信念を持つ

ここ数年、「神から頂いた自分の運命を信じること」そして「生かすこと」を強く意識するようになりました。逆に言えば、そうしないともろもろの出来事を乗り切れないと痛感しています。

思えば、私は昔から、施設でトラブルが発生したときなど、間に入って対応に当たることがよくありました。今考えると、自分の運命を生かす機会を与えていただいていたのだと思います。どなたにも温かい関心を持って関われるように。そして、運命を発揮できるように。いつもいつも祈願が欠かせませんでした。祈願して臨んでいくと、不安定だった心が定まり、不思議と事が丸く収まっていきます。運命の力の大きさや不思議さを、幾度となく味わわせていただいてきたのです。

たった一度の有限の人生。「運命を信じて、生かさなければもったいない」と肝に銘じながら、どんな場面でも温かい関心を忘れずに、頑張っていきたいと思います。