第12回 個性の尊重を大切に

人と「個性」の関係

私たちは、誰もが自分だけの特徴を持っています。その特徴は、外見、身体能力、性格、特技など、幅広い領域にまたがっており、それを総括して「個性」と呼んでいます。これからの社会では、この「個性」を尊重することが、非常に重要になると思います。

なぜならば、IT技術の発達が著しい現在は、新型コロナによるパンデミックとも重なって、新たな社会を迎えようとしていますが、その社会では、個人と個人との交流の重要性が増していくからです。当然、相手の「個性」を正しくつかむことも欠かせなくなるでしょう。

 

情報のコントロールは個人の手へ

今私たちは、勤務形態や教育のスタイルなど、社会生活においてさまざまな変化を経験しています。個人間の交流の重要度が高まっているのもその一つです。情報伝達の場面を例に挙げましょう。私たちが情報を得る手段として、今までは、新聞や雑誌をはじめとした商業的な媒体に依存してきました。しかし、現在ではそれらが激減し、個人と個人が直接情報交換をするSNSが躍進。経済や政治の動向に影響を及ぼすほどの力を持つまでになっています。ロシアによるウクライナ侵攻では、市民間のSNSによる情報交換が、ロシアの侵攻計画に影響を与えたという事実も、誰もが知るところとなっています。まさに、個人間の交流の重要度が増したことを示す、顕著な例と言えるでしょう。今や、個人が情報をコントロールする時代に突入したわけです。

この傾向が今後も続くとしたら、自分が交流する相手の「個性」をしっかり認識することが不可欠となります。それが、人を理解する第一歩だからです。

 

相手の「個性」をつかむ努力を

「個性」をつくり上げるものには、気質や体質など、親、先祖から受け継ぐ遺伝的要素と、生まれ育った環境などによって形成される後天的要素があります。いずれにせよ、「個性」とは、一人一人の基盤、土台となるものです。そう考えると、相手の「個性」を尊重することは、対人関係を築く際に最も大切なことと言えます。私たちは、常にそのことを心に留めて、人生を歩む上で生かしていく努力をするべきです。

人は、時に自分の予想しない感じ方をしたり、行動を取ったりするものです。しかし、相手の「個性」をつかんでいれば、予測の助けとなります。ですから、相手を理解しようとする努力には価値があるのです。

 

「個性」と「個性」は調和する

生きていれば、苦しいことや悲しいことなど、さまざまに起こります。そのようなときに、助けや励ましを得られたなら、それこそが自分自身の「個性」への「誇り」となります。

一人一人、「個性」は異なりますが、どのような「個性」であっても、誰もが自分の「個性」に「誇り」を持つことができるのです。この「誇り」が、生きる上での重要な原動力となります。

また、各自に「個性」があるからこそ、人と人はつながり、親和することができます。人類の歴史がおよそ200万年以上も続いていることが何よりの証しです。人間は、互いに和をもってつながり合える生物なのです。それぞれの「個性」、すなわち「運命」は、互いに調和すると、神もお教えくださっています。

今こそ、互いの「個性」を尊重し、人と調和して生きていきましょう。

略歴
東京大学法学部卒業。同大学大学院修了。
平成15年から平成18年まで日本大学法学部法学部長、平成18年から平成19年まで同大学副総長を務める。著書『刑法総論』『刑法各論』ほか。

 

沼野先生の連載コラム、いかがでしたか。感想などを、以下の投稿フォームから、ぜひお寄せください。

時代を生き抜く
社会で光る人